With That Name in My Heart: Side Story (Part 2)
サイドストーリー（後編） (Saido Sutoorii (Kouhen))
Character appearances:
？？？
名前のない少女
まだ誰でもない、名前すらもらえていない“主人公”なの
名前のない少女
わたしはどうせすぐに捨てられる。 他の主人公達もそうだったから
名前のない少女
あの子は、自分が創る『主人公』と 自分のことが嫌いみたいなの
MEIKO
（このままずっと自分を嫌い続けて——）
MEIKO
（もうひとりの自分ともいえる『主人公』達まで 否定し続けたら……）
MEIKO
（この子達だけじゃなくて、 自分の想いさえも捨ててしまうかもしれない）
MEIKO
（……見守る立場とはいえ、 こんな状況は放っておけないわ）
MEIKO
……落ち着いたみたいね。 大丈夫？
名前のない少女
うん……。そもそも泣いてたのはあの子で、 わたしじゃないから
MEIKO
……ねえ、もしよかったらあなたや、 想いの持ち主について教えてちょうだい
名前のない少女
……いいけど、わたしには何もないよ。 さっきあなたが拾ってくれた設定と、あとは……
名前のない少女
あ、そういえば……さっきのとは別に、 もうちょっと設定が書き足してあった原稿用紙を見た気がする
MEIKO
本当！？ じゃあ、それを探してみましょ！
名前のない少女
……でも、わたしのことなんて知ってどうするの？
MEIKO
そんなの決まってるわ
MEIKO
私は、あなたの物語を読んでみたいの
名前のない少女
…………！
MEIKO
物語自体はまだ書かれていないかもしれないけど、 設定を見れば何か——
名前のない少女
なんで……
名前のない少女
わたしは、なんのとりえもない平凡な高校生で、 まだ名前すらなくて——
MEIKO
設定はそうかもしれないけど、 実はあなたって、平凡なんかじゃないのよ
名前のない少女
どういうこと……？
MEIKO
この世にどれだけの人がいて、 どれだけの物語があったとしても——
MEIKO
あなただけが、あなたの物語の主人公なの
名前のない少女
…………！
MEIKO
さあ！ あなたについて書いてある原稿用紙を探しましょ！
MEIKO
……えっと、これは……。 ファンタジーの設定っぽいから、さすがに違いそうね
MEIKO
あなたのほうはどう？
名前のない少女
ない……
名前のない少女
どうせあれも捨てられた設定だし、 もうどこにも……
？？？
ううっ……
MEIKO
あ……。また……
想いの持ち主
……して……
想いの持ち主
私の夢なのに……どうして、わかってくれないの……
MEIKO
これは……
想いの持ち主
っやだ……いやだ……。 まだ、やめたくないの
想いの持ち主
あともう少し、頑張らせて—— そしたらきっと……きっと……
MEIKO
今の、聞こえた？ 想いの持ち主はまだ頑張りたいって……！
名前のない少女
……きっと、口だけ。 あなたが思ってるような意味じゃない
名前のない少女
最近のあの子は、主人公が『理想のあの人』に導かれて 助けてもらうっていう展開の話しか、書けなくなってるし
MEIKO
……そういえば、拾った原稿用紙にあったわね。 『理想のあの人』が主人公に手を差し伸べるって
MEIKO
それはそれでいいじゃない？
名前のない少女
え……
MEIKO
導いてくれる人が先生なのか先輩なのか、 全然知らない人なのか——それだけでもドラマが生まれそうだし
名前のない少女
……なんで？ なんで、そんな風にあの子を肯定するの？
名前のない少女
あ、わかった……そういう風にあの子に創られたんだ。 そうなんでしょ？
MEIKO
……ごめんなさい。 聞かれなかったから、うっかりしちゃってたわ
MEIKO
実は私、ここじゃない別の場所から来たの
名前のない少女
……そういう設定っていうこと？
MEIKO
あはは……。 そういうことにしてもいいけど……
MEIKO
ここはね、あなたを創った想いの持ち主の 想いの欠片から生まれたセカイなの
名前のない少女
想いの、欠片……セカイ……？
MEIKO
このセカイから誰かの泣いている声が聞こえて、 『どうしたんだろう？』って思って、様子を見に来たってわけ
MEIKO
そうやって私達は、人の想いに寄り添って その行く末を見守っているのよ
名前のない少女
見守る……
MEIKO
だから、例えば『誰かに導いてほしい』っていう 見る人によっては受け身な状態でも、私は否定しないわ
MEIKO
実際、自分ひとりではどうしようもない状況にいる人も たくさんいると思うから
名前のない少女
で、でも……！
名前のない少女
でも、そんなのって……誰かに頼るみたいで……
MEIKO
ズルい？
名前のない少女
…………！
名前のない少女
…………うん
MEIKO
またひとつ、あなた達のことがわかったかもしれないわ
名前のない少女
……わかったって、何が？
MEIKO
想いの持ち主は、自分や自分が創った主人公が嫌いって、 言っていたでしょ？
MEIKO
あれってもしかして、自分自身っていうより、 誰かにすがろうとしている 自分の甘さへの嫌悪なんじゃないかしら？
名前のない少女
え……
MEIKO
……私ね、 ここに来た時に『悲しさ』と『悔しさ』を感じたの
MEIKO
きっと『悲しさ』は、夢を誰にも理解してもらえないこと
MEIKO
そして『悔しさ』は……、 結果を出せない自分に対しての想いでもあるんだろうけど——
MEIKO
誰かにすがろうとしている、 自分の不甲斐なさに対する想いなんじゃないかしら？
名前のない少女
じゃあ、あの子は……。 まだ頑張りたいって、本当に思ってるのかな……
MEIKO
さっきも言ったけど、 誰かに導いてもらうことは決して悪いことじゃないわ
MEIKO
でも、それをズルいと感じてしまうなら—— 自分自身で立ち上がるしかない
MEIKO
少なくとも、あなたを創った想いの持ち主は そのことをわかってると思う
名前のない少女
…………
MEIKO
なんなら、あなた達自身が 『理想のあの人』になってしまうのもいいかもね
名前のない少女
えっ、わ、わたし……？ でも、まだ名前もないのに……
名前のない少女
なれる、のかな……
名前のない少女
なりたいって思ったら……なれるのかな……
MEIKO
あ……。 そろそろお別れみたいね
MEIKO
これからも、私はそばで見守っているわ。 想いの持ち主にもよろしく言っておいて！
名前のない少女
あ……、あのっ……！ 待って……！
名前のない少女
名前……
名前のない少女
あなたは、あるんでしょ？
MEIKO
私は『MEIKO』よ
名前のない少女
『MEIKO』……
MEIKO
ええ。 自分で言うのもなんだけど……
MEIKO
たくさんの人に大切にしてもらって、愛されてる—— とっても誇らしい、自慢の名前なの
名前のない少女
……いいな
名前のない少女
いつか、わたしも……。 そんな素敵な名前がもらえるかな
MEIKO
大丈夫。 想いの持ち主が、あなたにピッタリな名前をくれるわ
MEIKO
とびきり素敵な物語と一緒にね
名前のない少女
行っちゃった……
名前のない少女
……そういえば、 設定が書いてある原稿用紙を探してたんだっけ
名前のない少女
……あの子は、わたしにどうなってほしかったんだろう
名前のない少女
…………
名前のない少女
……探そう。 ——ちゃんと、自分で見つけなくちゃ