奏の部屋
Kanade
…………
Kanade
（……お父さん……わたし、頑張ったよ……）
Kanade
（でも、わたしの音楽じゃ、誰も救えなかった……）
Kanade
（お父さんを苦しめて……雪も救えなくて、 それでもまだ、わたしは作り続けなきゃいけないの……？）
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？？？
誰よりも消えたがってるくせに
Kanade
……雪
Kanade
だから雪も、あそこにいたんだね
Kanade
静かで冷たい……あのセカイに
Kanade
……わたしも
Kanade
もう、いいよね
誰もいないセカイ
Kanade
（……何もない……）
Kanade
（……地面、硬いけど、冷たくない）
Kanade
（このまま……目を閉じて、ここにいれば……）
Kanade
（楽になれる……かな……）
Kanade
…………？
Kanade
（歌が……聴こえてくる……？）
Kanade
（これは……ミクの歌声……？ それに、この曲……わたしが昔作った…………？）
Kanade
どこから、聴こえてくるの……？
ミク
……奏？
Kanade
……ミク……
ミク
また、来たんだね。 あの子を、見つけに来てくれたの？
Kanade
それは……
ミク
…………そう
Kanade
なんで、わたしの曲を……知ってるの……？
ミク
……今、歌っていた歌のこと？
ミク
この歌は、最初からこのセカイにあって、わたしは知っていた。 わたしは、それを歌っていただけ
Kanade
……わたしの曲が、最初からこのセカイに？
ミク
そう。最初から
ミク
でも……これは、奏が作った曲だったんだね
Kanade
…………
ミク
あの子の想いでできたこのセカイは、何もなくて、真っ白
ミク
それでも、この曲だけはあった
ミク
だから……奏の作った曲は、 あの子の想いに届いていたんじゃないかな
Kanade
届いて……？
Kanade
でも……でも！
？？？
でも……それじゃ足りなかった。 見つけられなかった
Kanade
でも、雪を救えなかった！
Kanade
……わたしの曲は……足りてなかった……！ 届いてたって、意味がなかった……！
ミク
奏……
ミク
……奏も、あの子と同じくらい苦しいんだね……
Kanade
………………
ミク
同じだから、なのかな
Kanade
え？
ミク
この何もないセカイに奏の曲があるのは、 あの子と同じ気持ちがあるからなのかもしれない
ミク
同じ気持ちがあるから、 何も届かなかったあの子に、唯一、奏の曲は届いた
ミク
足りてなくても……ただひとつ、届いてたんじゃないかな
Kanade
…………ミク
ミク
わたしはあの子に、本当の想いを見つけてほしい
ミク
あの子は、本当の自分を見つけたくて、 ずっと曲を作ってた
ミク
苦しくても、苦しくても、 泣きながらもがいて、作り続けてた
ミク
——あの子の本当の想いは、 消えたいなんてものじゃない
Kanade
……！
ミク
だから、あの子を見つけてあげて
ミク
それができるのは、奏だけだから——
Kanade
わたしの……
Kanade
わたしの曲は……雪を、救えるの？
ミク
わからない。 でも——
ミク
あの子を見つけてあげられるとしたら、きっと奏の曲しかない
Kanade
わたしの、曲しか……
Kanade
………………
Kanade
もし……そう、なら……
Kanade
……わたしは……わたしは、作らなくちゃ
Kanade
今度こそちゃんと——雪を、救わなくちゃ
まふゆの部屋
Mafuyu
…………
コメント
『OWNってやっぱすごい。天才でしょ。 でなきゃプロが名前隠して作ってるんだよ』
コメント
『案外、鬱屈した中年の引きこもりが作ってたりしてな』
Mafuyu
……くだらない。やっぱり見つからない
Mafuyu
私は…………本当の、私は……どこ……？
Mafuyu
…………
Mafuyu
いつから、見つからなくなったんだろう……